ABOUT THE MOVIE
邦題:ザ・ホエール(2022)
原題:The Whale
製作国:アメリカ
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、サマンサ・モートン、タイ・シンプキンス
上映時間:117分
シネちゃぶ度チェック
★★★★★:おデブが主役/完全なる癒し!
★★★★☆:おデブが準主役/大活躍!
★★★☆☆:おデブが脇役
★★☆☆☆:おデブがチラリ映る
★☆☆☆☆:全然いない…
※この記事は本編に一部触れています。未鑑賞の方はご注意ください。
予告編&あらすじ
【シネちゃぶ度:★★★★★】
恋人アランを亡くしたショックから、現実逃避するように過食を繰り返してきたチャーリー(ブレンダン・フレイザー)は、大学のオンライン講座で生計を立てている40代の教師。歩行器なしでは移動もままならないチャーリーは頑なに入院を拒み、アランの妹で唯一の親友でもある看護師リズ(ホン・チャウ)に頼っている。そんなある日、病状の悪化で自らの余命が幾ばくもないことを悟ったチャーリーは、離婚して以来長らく音信不通だった17歳の娘エリー(セイディー・シンク)との関係を修復しようと決意する。ところが家にやってきたエリーは、学校生活と家庭で多くのトラブルを抱え、心が荒みきっていた……。
公式サイト
注目ポイント
⚫︎ 体重272キロ
⚫︎ ブレンダン・フレイザーのオスカー演技
体重272㎏ゲイの贖罪&救済
「ザ・ホエール」
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) April 9, 2023
彼氏を亡くした体重272キロのゲイ男性最期の5日間。男に走り家族を捨てたチャーリーの身勝手だが愛に溢れた贖罪と救済。「正直である事」を叩き付けるラストが超胸熱な大傑作。B・フレイザー完全復活の演技が圧倒的でファットメイクも違和感なし!
人は人を気にせずにはいられない。 pic.twitter.com/ndvttSWMKj
『ザ・ホエール』は、劇作家サミュエル・D・ハンターによる舞台劇をダーレン・アロノフスキー監督、ブレンダン・フレイザー主演で映画化した人間ドラマ。
ブレンダン・フレイザーは、渾身の演技でアカデミー賞主演男優賞を見事受賞。『ハムナプトラ』シリーズでブレイク後、スター街道まっしぐらかと思いきや、『3』あたりから低迷。そして、本作で再ブレイク。
最近ではニコラス・ケイジなど、少し低迷気味のスターが復活し始めてる感。かつてのスターの活躍が楽しみになってきました。
ダーレン・アロノフスキー監督と言えば、『レスラー』で名実共にミッキー・ロークを復活させた人。
あの作品の主人公は自らの人生を見つめ直し、不器用ながら痛々しいまでに奮闘する生き様が、実際に迫真の演技を披露したロークの人生とも重なって感動を呼びました。
そんなロークに続けとばかりに、アロノフスキー監督はブレンダン・フレイザーを完全復活させちゃいました。
凄い。
『ザ・ホエール』の主人公も『レスラー』同様に人生を見つめ直す男の話なのですが、本作のチャーリーの状況はかなり特殊。
家族を捨てて男と逃げる
↓
彼氏が亡くなる
↓
失意の中、食べ続ける
↓
体重272キロ
↓
余命わずか
という状況からスタート。
自らの死期を悟った主人公チャーリーは、過去に捨てた娘との和解を試みるという最難関ミッションに挑む。
冒頭、鯨のような巨漢がゲイビデオを見てるシーンから始まるのですが、チャーリーは男に走って家族を捨てたゲイ男性。
妻と娘を置き去りにして男と逃げたチャーリーが許されるはずもないんですが、自ら犯した過ちと真摯に向き合う贖罪の意味もあったんでしょう。彼の人生終わりへの旅は、誠実で優しくて壮絶。
ズシンズシンと文字通り超重量級のヘビーさで強烈に心にのしかかってくるかのようなドラマでした。
死と隣り合わせの生活。不安感が常に漂い、落ち着いて見ていられない。映画全編に死が漂っているかのような雰囲気に息が詰まるような重苦しさ。それが本作の贖罪と救済というテーマとリンクしているかのようでした。
チャーリーは272キロあるので、当然思うように歩けません。看護師で友人のリズの助けがないと何もできない。このままだと死ぬというのに、病院に行くのを頑なに断ります。ほぼ場面転換しない室内で(元は舞台劇)、チャーリーという「鯨」がもがいている姿は観ていて本当に辛い。
人は人を救えない。
神も人を救えない。
でも、人は人を気にせずにはいられない。
自分しか自分を救えないのだとしても、人はどうであれ、寄り添わずにはいられない生き物。自らの命をかけて自分に正直に生きる男と彼に傷付けられた者たち。その中で、娘が超めんどくさい子というのが何ともキツいのだけど、それがまたチャーリーの終わりの旅を完結させる為には重要な要素だったりします。
ハーマン・メルヴィルの『白鯨』を示唆させる場面が多く、考察しながら観ることもできます。様々な解釈ができるお話なのも面白い。
ちなみに、ダーレン・アロノフスキー監督作『ノア 約束の船』は、ラッセル・クロウとレイ・ウィンストンという2大おデブ俳優が共演している見逃し厳禁映画となっております。
超巨漢ブレンダン・フレイザー
ブレンダン・フレイザーは少し太めだったという事もあり、特殊メイクにも違和感なく馴染んでいた感。
体重272キロの超巨漢を演じるには当然メイクが必要なわけですが、本年度のアカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しただけに流石に素晴らしい出来でした。
まさかの裸になるシーンまであるのですが、それもあまり違和感なかったです。ブレンダンって長身なので、物凄い迫力。鯨が立ち上がった!みたいな。
室内に終始響く喘鳴もリアル。
デブ好きとしてもこれほどのメイク技術であれば許せるレベルなので、今後はこの基準でお願いしたいですね。『アベンジャーズ/エンドゲーム』のファットソー(クリス・ヘムズワース)のような違和感ありすぎるメイクはNGで。
おデブな特殊メイクをするにしても、やはりデブ俳優が演じないとリアル感が出ない気がします。『アオラレ』のラッセル・クロウもしかり。元々太っているラッセルがファットスーツを着る事で、あの迫力を出せたわけですし。
本作のように鯨のような体型の場合は特殊メイクが必須ですが、普通のデブ役ならやはりおデブ俳優に演じていただきたいですね。
徹底した役作りで有名なクリスチャン・ベールが主演した『バイス』(2018)は素晴らしかったと思います。彼は役作りで20キロ増量。メイクなし。誰だか分からないぐらいのおデブに仕上げて来ました。
お見事!
同時期の『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017)のゲイリー・オールドマンは逆に完全な特殊メイク。
どちらがリアルかと言えば、当然前者なんですよね。
「バイス」
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) April 6, 2019
もはや別人なクリスチャン・ベールの太いボディに終始釘付け♪政治の闇に斬り込み、ブッシュらを徹底的に小馬鹿にして現政権に警鐘をぶちかますアメリカの懐の深さに感嘆。辛抱強く魚を釣るようなチェイニーの権力欲がもたらす結果の恐ろしさ。皮肉たっぷり&驚きの仕掛けが満載で面白い! pic.twitter.com/myk0KF7bwS
最近のファットメイク映画をご紹介
というわけで、ここ数年のおデブな特殊メイク映画を何本かご紹介。
『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017)
ゲイリー・オールドマンが完全特殊メイクでアカデミー主演男優賞を受賞した歴史ドラマ。本作も『ザ・ホエール』と同様、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しています。
実際のチャーチルはおデブさんだったので、過去にブライアン・コックス、ブレンダン・グリーソン、アルバート・フィニー、イアン・マクニース主演で映画化されています。
みんなおデブ俳優!
「ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男」でアカデミー主演男優賞を受賞したゲイリー・オールドマンが話題ですが、同じチャーチルを演じたブライアン・コックス、ブレンダン・グリーソン、アルバート・フィニー、イアン・マクニースにも注目して欲しい。#ウィンストン・チャーチル pic.twitter.com/5nxnvdybRs
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) March 25, 2018
同時期に公開した『チャーチル ノルマンディーの決断』(2018)は、ブライアン・コックスが特殊メイクなしで体重増量して挑んだ作品。
2018-115「チャーチル ノルマンディーの決断」
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) August 20, 2018
ダンケルクの戦いから4年。作戦決行を前に苦悩し葛藤するチャーチル自身に焦点を当てた地味ながら人間味溢れる良作。体重増量して挑んだブライアン・コックスは本人にそっくりで大熱演!G・オールドマン版と合わせて観ると、より彼の理解が深まるはず。 pic.twitter.com/SdXN8dsek5
『ミッション・デブポッシブル』(2018)
タイトル通りまさにおデブなアクション映画なのですが、ファットスーツの違和感が凄い。ただ、超重量級アクション連発で意外と楽しめちゃいます。
「ミッション・デブポッシブル!」
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) August 24, 2020
デブ好きでもさすがに見るに耐えない低レベルの特殊メイクと下らなさなのに、次第に見慣れて普通に楽しめてしまった。東京を舞台に150キロスパイと警備員がぐっだぐだなノリで悪者と対決する全然笑えないコメディ。重量級肉弾アクションの数々は意外と良かったなと。 pic.twitter.com/K7LsCAG6D4
『僕たちのラストステージ』(2019)
サイレント時代に活躍したおデブ俳優オリヴァー・ハーディ役はジョン・C・ライリー。彼は少し太めだから、体重増やした方が違和感なかったかも?
「僕たちのラストステージ」
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) April 21, 2019
ヤセとデブのお笑いコンビの先駆けとも言える伝説の極楽コンビ“ローレル&ハーディ”の晩年を描いた感動作。スティーヴ・クーガンとジョン・C・ライリーが特殊メイクでそっくりに大熱演。二人の深い友情が伝わるラストがイイ。コントやダンスも楽しい優しさ全開な良作。 pic.twitter.com/qHeV1iiZTC
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)
『ソー:ラブ&サンダー』(2022)
クリス・ヘムズワースがファットスーツでデブソーを演じています。これを観た時は「えっ?」ってなりました。『ザ・ホエール』などと比べるとクオリティがちょっと・・・
『エンドゲーム』は大好きですが、ここだけ凄い違和感があるんですよね~
「アベンジャーズ/エンドゲーム」のデブ・ソーはもろにファットスーツ感があるので、もう少しリアルな肉付きにして欲しかったけど、可愛かったからOK♡ pic.twitter.com/CviTUJgPbX
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) June 4, 2019
『スキャンダル』(2019)
ジョン・リスゴーがFOXニュースのCEOロジャー・エイルズを特殊メイクで演じています。ちょっと違和感があって気になりました。
「スキャンダル」のオスカーメイクアップ賞受賞はシャーリーズ・セロンとか女優陣のメイクが評価されたんだろうけど、ジョン・リスゴーのメイクは違和感ありすぎてどうにも気になって仕方がない…デブを見慣れてない人には違和感ないのかな😅 pic.twitter.com/imDPdgoihP
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) February 10, 2020
『ザ・ラウデスト・ボイス―アメリカを分断した男―』(2019)
『スキャンダル』(2019)と同様、ロジャー・エイルズ役をバリバリの特殊メイクで挑んだラッセル・クロウ(2023年時点のラッセルの体型ならそのままでも演じられそう)。第77回ゴールデングローブ賞で主演男優賞を見事受賞。
ラッセル大熱演!
「ザ・ラウデスト・ボイス―アメリカを分断した男―」(WOWOW放送)
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) April 2, 2020
セクハラで辞任したFOXニュースのCEOロジャー・エイルズを描くラッセル・クロウ主演の実録ドラマ。GG賞を受賞したラッセルのパンパンに太った特殊メイク演技も見所。「スキャンダル」のリスゴーと違って今のデブ体型でもいけたのでは😊 pic.twitter.com/25ubhdInnG
『アオラレ』(2020)
我らがラッセル・クロウ主演のサイコサスペンス。
元々デカいラッセルがファットスーツで更に巨大化してモンスターみたいに襲い掛かってくる怖さ。
面白いです。可愛いです。
「アオラレ」
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) May 30, 2021
ラッセル・クロウが太い!デカイ!可愛い♡という前に、超怖い!制御不能の怒り狂った獰猛な熊🐻が周囲の人間を容赦なく巻き込みながら執拗にアオりまくって来る恐怖。ひたすら追い込まれる展開はスリリングで手に汗握るし、重量級ラッセルの怪物並みの威圧感に緊迫感増し増し。面白い♪ pic.twitter.com/kMDeg8gD4r
『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』(2020)
やけになって暴飲暴食で120キロデブになった刑事をドニー・イェン兄貴が特殊メイクで演じるアクションコメディ。太ったドニーさんでもアクションはいつも通りキレッキレ!これはOK(笑)
ウォン・ジン演じるおデブなシウサーも可愛いよ♡
「燃えよデブゴン/TOKYO MISSION」
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) January 3, 2021
宇宙最強ドニーさんが重そうな肥満体で悪党共をぶっ飛ばす!往年のコテッコテ香港映画を彷彿とさせる緩〜い展開とキレッキレの本格アクションの組み合わせでめちゃ楽しい!何も考えず頭空っぽにして素直に楽しんだもん勝ち。リアルデブのシウサーにも注目♡ pic.twitter.com/cN2nLMP1iv
『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)
ハルコネン男爵役と言えば、ケネス・マクミラン(デヴィッド・リンチ版)やイアン・マクニース(ドラマ版)などおデブ俳優が演じてきましたが、ドゥニ・ヴィルヌーヴ版は特殊メイクのステラン・スカルスガルド。
もちろん、浮きます(笑)
「DUNE/デューン 砂の惑星」と言えば巨漢ハルコネン男爵です。浮きます。
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) October 16, 2021
ドゥニ・ヴィルヌーヴ版
ステラン・スカルスガルド
デヴィッド・リンチ版
ケネス・マクミラン
ドラマ版
イアン・マクニース pic.twitter.com/DCwxZ779ID
『3月のライオン』(2017)
染谷将太くんが、零のライバル二海堂晴信を特殊メイクで演じています。演技は良かったのですが、この役はやっぱりおデブ俳優に演じて欲しかった1本。
邦画の場合、原作がデブなのに痩せ型のイケメンが演じるケースが多いので、それよりはマシですけどね。
染谷くん in 「3月のライオン」https://t.co/6fmyqVxfpe pic.twitter.com/6rekdH4wjE
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) January 12, 2017
『レジェンド&バタフライ』(2023)
徳川家康役は斎藤工。
家康と言えば狸オヤジなイメージですが、誰だか分からないぐらいのメイクをするなら、太った役者に演じて欲しかったです。
『功名が辻』で家康役を演じた西田敏行は最高!
徳川家康演じてるデブ誰??って思ったら、特殊メイクの工だった。 pic.twitter.com/njdmAbctd8
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) January 29, 2023
『ザ・ホエール』の舞台劇。
主人公を演じる役者さんは基本的におデブさんのようです。
それが正解ね。
「ザ・ホエール」は舞台劇の映画化。基本的におデブ男性がファットメイクして演じてる感じね。 pic.twitter.com/DL5zrbLiyR
— シネちゃぶ (@cinechub_loaf) April 9, 2023